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沖縄研究奨励賞

沖縄研究奨励賞について

《沖縄研究奨励賞の設置》
沖縄研究奨励賞(奨励賞)は、当協会の設立目的にある「沖縄の振興施策への積極的な協力」に関連し、これを推進する事業として、沖縄の地域振興に貢献する人材を発掘し育成することを目指して、昭和54年7月に設置されました。
 
《沖縄研究奨励賞の概要》
沖縄を対象とした優れた研究を行っている50歳以下(応募の年の7月15日現在)の新進研究者(又はグループ)を受賞対象としています。 応募しようとする方(応募者)の出身地及び国籍は問いません。応募にあたっては推薦応募の形式をとっており、応募者は大学、学会または実績のある研究者などからの推薦を受けて応募しなければなりません。 学会等から推薦された応募者は、その年に開催される選考委員会に諮られ、受賞候補者が選考されます。 沖縄協会会長は、選考委員会から推薦された受賞候補者の中から当該年度の受賞3件以内を決定します。 受賞者には、奨励賞として本賞と副賞50万円を贈呈し表彰するというものです。
 
《広がりをみせる沖縄研究》
奨励賞は、これまでに113件(106名・9グループ)の受賞者を数えています。受賞に至らなかった研究の中にも受賞に値する研究が数多く含まれており、毎年開催される選考委員会での選考作業は、常に難航を極めています。奨励賞は、沖縄という特定の地域の専門的な研究を授賞対象としているにもかかわらず、近年では沖縄という限られた地域を超えて、 国際的な広がりのある普遍性を備えた研究もみられるようになりました。 また、応募者には、日本で研究活動を行っている外国からの研究者も含まれるようになりました。 沖縄研究の深さ、そして沖縄研究にかかわる人材の豊富さを実感させられます。
奨励賞は、沖縄の学術文化、地域経済の発展の基盤となる素晴らしい研究者とその研究を顕彰し続けています。
《終わりにかえて》
奨励賞の第1回の受賞者・大城喜信氏は、平成4年に沖縄協会が発行した 『沖縄研究奨励賞のあゆみ』の中で次のように述べています。
 
「沖縄は、地理的、歴史的、文化的、産業的な観点から研究テーマも豊富にあり、解決すべき課題も多い。しかしながら、沖縄では一般に研究開発に対する社会的評価が低く、 新しい分野に挑戦する者に対しては比較的冷淡であり、社会的には形が見えるまでは資金的 あるいは精神的支援の水準が低い段階にあると私は考えている。したがって、公的・私的研究機関を問わず研究者には厳しい条件が多いので、これを乗り越えるために余分なエネルギーが要求され、能力を十分に発揮しにくい環境であるといえよう。このような沖縄社会の空白部分に大きな光を当てたのが沖縄研究奨励賞であり、多くの研究者に目標を与えている」

『第44回沖縄研究奨励賞』受賞者

【受賞理由】

◆自然科学部門:2件◆(敬称略)

 沖縄県農業研究センター上席主任研究員・玉城 麿
〔研究題目〕
沖縄農業の台風対策に関する研究
〔受賞理由〕
 本土復帰当時、沖縄は天然の温室という発想で振興が試みられたが、沖縄の激しい気候変動対策がカギとなっていた。
沖縄の気象条件を 10 年単位で平均化してみると、農業に対し好適な条件に思われがちであるが、年単位の気象変動は極端に変化し、それに耐えられるサトウキビやパインアップルが主幹作物の役割を担ってきた。
その限界を打破するためには、高付加価値の園芸作物の振興に尽きるが、冬季の花卉や野菜は、簡易な施設の応用で、それなりに発展してきたが、施設の高度利用の完成度を更に高める必要が残されていた。
すなわち、台風被害が殆んど発生しない周年型のプラスチックハウスの完成である。これが実用化されると、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ等々の夏場に出荷される多年性作物の安定生産と高付加価値化と農家の労働配分を根本から解決する大きなメリットがある。
本研究は、2003 年の台風 14 号(最大瞬間風速 74.1ⅿ)による被害を分析し、コンクリート基礎、ベースプレト、各種の接合ボルト、溶接部の破断等の多岐にわたる解決策を提示し、ネットの併用で最大瞬間風速 50ⅿに耐える実用的なハウスを完成したことである。
更に重要なことは低コスト化である。20~30 年以上のスパンを考えると、H型鋼材の活用であるが、初期投資に難題がある。本研究の成果の応用は、コストと強度を同時に解決しており、農家にとっても取り組み易いレベルに達している。気がついてみると、沖縄の大半のハウスが周年張に変わってきており、ハウスのメンテナンスや栽培技術も着々と向上しており、本研究は沖縄農業の可能性を現実化しつつあり、素晴らしい実用技術である。
 

産業技術総合研究所主任研究員・井口 亮

〔研究題目〕
造礁サンゴ類の環境応答に関する総合的研究
〔受賞理由〕
 熱帯・亜熱帯の浅海域に特徴的なサンゴ礁は、地球上で生物多様性のもっとも高い生態系が形成されている場のひとつである。このサンゴ礁の基盤を形作る造礁サンゴ類は環境変化に非常に鋭敏で、現在、世界的に注目されている地球温暖化やCO2濃度の高まりによる海洋酸性化の影響により、その減少が危惧されている。
井口亮氏はこの問題に強い関心をもち、造礁サンゴ類の環境応答に関する研究を精力的に行って、多くの成果をあげてきた。研究の視野は、造礁サンゴ類への高温化の影響や、CO2濃度の高まりによる海洋酸性化の影響から、都市や農地からの栄養負荷の影響など、広い範囲に及んでいる。また、研究手法においても、飼育下における環境要因変化への反応実験、環境変化への耐性メカニズムについての分子生物学的分析、諸地域から得られた標本解析による遺伝的集団構造解析など、多様なアプローチが積極的に活用されている。とくに注目されるのは、環境要因を厳密に制御した飼育実験系を自ら確立し、サンゴ類の環境応答の諸側面を詳細に把握することに成功したことであり、海洋酸性化がサンゴ類の石灰化や光合成活性を低下させること、あるいは受精率を低下させることなどを明らかにしている。研究成果は数多くの論文として公表され、高く評価されている。
以上のような井口氏の成果は、出身地である沖縄の研究機関で研究を積んだ同氏のサンゴ礁に関する深い関心に基づいており、学術面での貢献に加え、観光業などの面から沖縄にとって重要なサンゴ礁の保全方策を考えるうえでも貴重な情報を提供することを通じ、地域振興にも貢献するものである。井口氏の今後のいっそうの研究推進と活躍が期待される。
 
                      

◆人文科学部門:1件◆


名桜大学国際学群上級准教授・照屋 理
〔研究題目〕
琉球文化圏における口承あるいは筆録の文芸・文化研究
〔受賞理由〕
照屋理氏は、『おもろさうし』を中心に琉球文学の研究を展開してきた新進の研究者である。
氏の研究は、文献研究とこれを裏付けるフィールド調査を両輪としているが、これが効果的になされ、大きな成果を挙げている。今回提出された「『おもろさうし』の他界観と寄り物伝承―名護におけるイルカに関する伝承を中心に―」は、「名護の首長の人徳が勝れ、善政が行われると、名護湾にはヒートゥ(イルカ)が多数寄ってくるが、その逆だとヒートゥは寄ってこない」という伝承を起点にした論文である。氏は沖縄各地の同類の伝承を調査し、それがイギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザーの「殺され王」の概念につながるものであると同時に、この名護のイルカタイプの話が日本本土にはみられない珍しい事例であることを指摘している。さらに、この類型が『おもろさうし』の地域支配者および東アジアの領主的存在と「世」(社会)とのパラダイムを内包するものである可能性も論じており、問題を空間軸・時間軸両面から論じた勝れた論文になっている。構成的にやや難のある部分もあるが、今後の発展を期待させる論考である。
氏は現在名桜大学で取り組まれている「琉球文学大系」編集刊行委員会副委員長として、大きな役割を果たしている。今後の琉球文学研究を担う若手随一の研究者であり、沖縄研究奨励賞を受賞するに相応しい人物と評価される。
 

◆社会科学部門:0件◆




沖縄研究奨励賞規則及び選考委員名簿(PDF)

選考委員

赤嶺 政信   (琉球大学名誉教授)
安 藤 由 美         (琉球大学名誉教授)
上 原 靜         (沖縄国際大学総合文化学部教授)
大 屋 祐 輔     (琉球大学副学長)
カストロ ホアンホセ (琉球大学工学部教授)
狩 俣 繁 久         (琉球大学名誉教授)
櫻 井 國 俊       (沖縄大学名誉教授)
田 名 真 之       (沖縄県立博物館・美術館前館長)
西 田 睦       (琉球大学学長)
波照間 永吉      (名桜大学大学院国際文化研究科国際地域文化専攻教授)
比 嘉 照 夫   (名桜大学付属国際EM技術センター長・琉球大学名誉教授)
譜久山 當則    (沖縄振興開発金融公庫前理事長)
牧 野 浩 隆   (元沖縄県副知事)
宮 城 隼 夫   (琉球大学名誉教授)
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